この空に、全ての願いを託して。
プロローグ
人は必ず、初めて何かを好きになる感覚を覚える時が来る。
私は、空が初めて好きになった瞬間だった。
空は、いろんな形に雲を変えて綺麗な姿を、私に見せてくれる。時間が違うだけで全く違う景色になる。
そんな空に夢中になったのは、幼い頃に見ていた子供向けの絵本がきっかけだった。
『そらは、なんであおいの?』
『くもってわたがしみたい!たべれるのかな?』
なんて、子供がよく疑問に思うようなことが絵本に詰め込んであった。
当たり前の様に私も疑問に思って両親に空のことを沢山聞いた。
その度にお母さんが、『千穂(ちほ)はお姉ちゃんと一緒で空が好きなのね』そう言った。
『うん!だってそらってすごいんだよ?ほらみてみて!』
気づけば私は、その絵本の虜(とりこ)になっていた。
何度も何度も繰り返し読んでもらった。
小学生に上がった頃からは、絵本ではなく、本物の空を見上げるようになった。
手を伸ばしても届かないと分かっていても、いろんな形に変わっていく雲の流れを見るのが好きだった。