いつか君を振り向かせられたなら
私の腕は矢野につかまれていた




矢野を認識した瞬間腕が熱を持ち始め体中が熱くなる




矢野の後ろには村田くんがニヤニヤしながら立っていた





「えっ?は?」



予期せぬ出来事に悠斗は困惑していた




しかし私もだ




矢野に腕をつかまれているというこの状況が理解できない




理解できていないのはクラスメイトも同じであった




みんなの視線が矢野に集まっている



あわよくば自分たちの班と組めればいいな・・・そう思っていた女子たちはショックを受けたような顔で矢野の行動を見つめていた



「だから。坂井を譲ってほしいんだよ」




静まり返ったクラスに響くような声で言う




私の腕をつかむ矢野の力が強くなる




でもなんで私はこの手を振りほどこうとしないんだろう




よく状況を理解できてないにもかかわらず漠然とそのような気持ちが生まれる




そして長く続く沈黙を破ったのは悠斗だった





「つまり。僕達は響達とではなく違う子達と組めと。そういうことでいいかな?」




だけど…




そう言って続く言葉に私はびっくりして悠斗を見る





悠斗は基本優しくて頼まれたら断れない性格なのに





「ごめん。無理だ。僕は響と組みたい」
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