いつか君を振り向かせられたなら
冷え切った体に矢野の熱がつたわって温かくなっていく




ゆっくりゆっくりと山道を登っていく矢野の首に手を回して落ちないように自分自身を支える



「坂井、軽すぎじゃね?ちゃんと食べてんのかよ」




「食べてるよ!食べるの大好きだし!」




矢野が私の足を持ってくれているので体重は全て矢野にかかっているような状態だ




重いはずなのにこれを軽いと言ってしまうなんてやっぱり男子はすごい




ふわっとジャスミンティーのような匂いがするTシャツに顔を埋めた




その途端安心感が胸に広がった





しかし心臓の音は未だに落ち着かない




私は気になることを矢野に聞いてみた




「ねぇ。矢野はなんで私を助けに来てくれたの?」







「困ってる人がいたら助ける。それだけだろ。」







「でもだって他の人いたでしょ。矢野は違う班なのに私の事わざわざ探しに来てくれたし…」







「違う班だから探しちゃいけないんだ?じゃあ川上が来た方が良かった?」




少し不機嫌そうな声で矢野はぶっきらぼうに聞いた



「な、なんで悠斗?私は本当に矢野が来てくれて嬉しかった。私このまま本当に死んじゃうかもとか思ってたんだから!」




「そーか。嬉しい…か…」




そう呟いてから黙ってしまった矢野のほうを見ようとすると




「見るな」




と少しくぐもった声が聞こえてきた
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