さよなら、センセイ
12.新天地へ
年が明けると、すぐに受験が始まった。
学校内もピリピリとした空気が張り詰めている。
そして、ヒロは第1志望の大学に進学が決まった。
憧れの一条拓人が通う大学。
実は兄秀則も希望して不合格になった大学だ。
一方でヒロの大学進学が決まったその日、授業が終わると恵は校長に呼ばれた。
恵のこれからについての話だ。
「産休中の佐久間先生が復帰される事になりました。
それで、若月先生の受け入れ先を当たっているのですが、都内にはなかなか良い所がなくて」
それは恵も重々承知している。
「そこで一つ、ご提案なんですが…
私の大学時代の友人が校長をしている学校がありまして、そこで英語教師を欲しがっているんです。
そこは、場所的になかなか教師が居つかず困っているようで。
私立花園牧高校。
ご存知ですよね?」
恵は耳を疑った。恵の実家から最も近い高校だ。といっても車で30分はかかるが…
「はい。私の地元では一番の進学校です」
校長はうなづいた。
「花園牧高校の条件は、立地にさえ目をつぶれば最高です」
歴史も古く、花園牧高校に通うことは一つのステータスになるくらい、地元では格が違う。恵も憧れの学校だった。
そこで教鞭がとれるなんて、夢のようだ。
だが。
いかんせん、遠すぎる。
「少し考えさせて頂いてもよろしいですか?」
「勿論です。
あ、私からは丹下くんには伝えていません。
来週、返事をする事になっていますから、じっくり話し合い、検討して下さい」