さよなら、センセイ

その夜、恵は帰宅するなりベッドに体を横たえた。

ヒロはもうすぐ大学生になる。今までよりも女の子に出会うチャンスも増えるし、何より彼の世界は一気に広がるだろう。


ーー私はきっと、捨てられる。


その時、また一人ぼっちでこの東京に居たくはなかった。
今回の花園牧高校の話はもしかすると、互いに傷つく事なく別れる為の、千載一遇のチャンスなのかもしれないと、思える。


この数ヶ月、ヒロが実家に来てくれた時以外は会わずにいた。電話とメールだけで、もちろん、肌も合わせていない。


はじめは辛かった。
でも、それがだんだんと薄らぎ、今では声が聞けるだけでも良くなってきている。
学校で時折姿が見れることもあるからかもしれない。

この距離感で平気になるなんて。
このままだと、花園牧高校に行ったら、どうなってしまうだろう。

彼の気持ちを、ずっと信じて待ち続ける事が出来るだろうか。



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