さよなら、センセイ
「で。
メグはどうしたいの?
俺のことがなけりゃ、最高の条件だろ。
そりゃ、行くよなぁ」
「…悩んでる」
「…俺は、メグの為に、メグと暮らす未来の為に、無理して頑張って大学決めたのに。
いいさ。
メグにとって俺は一番じゃないってこと、よくわかったよ」
怒りを抑えたヒロの声があまりに冷たく耳に響く。
「そんなことない!ヒロ、そんなことないよ!」
「悩んでるってことは、行きたいって思ってるんだろ。
俺のことならいいよ。
もう、いいよ。
さよならだね。
さよなら、若月センセイ」
恵に何も言わせずに、電話が切れた。
…終わり、なの?
これで、私たち、終わりなの?
教師は辞めて、ヒロと一緒にいる事を選ぶべきなの?
私にとって一番はヒロなのに。
恵は、通話の切れた携帯電話を見つめる。
ヒロの、怒りをはらんだ声を思い出す。
もう一度、電話をかける勇気は出なかった。