さよなら、センセイ
パタン、と部室のドアを閉めた途端、我慢していた涙がポロポロと落ちる。

見られてはいけない。でも、もう我慢できない。

恵は慌てて、目元をハンカチで押さえ、近くのプールに駆け込む。
いつも身につけているキーケースに機械室の鍵がある。


恵は、あたりに人影が無いことを確かめて、機械室に飛び込んだ。


「…っ…」
嗚咽と共に溢れる涙は止まらない。

こんなに泣いたら目が腫れる。
まだ、学校なのに。
でも、止まらない。

ヒロ。

ヒロ。

やっぱり、好き。

思い出すのは楽しかった2人の思い出。いつも、いつでも貴方はそばで私を支えてくれた。
大切にしてくれた。


だけど。

もう、忘れなきゃ。

忘れなきゃ。

もうすぐ、別々の場所でそれぞれの人生を
もう二度と交わることのない人生を…


恵はドアの側にしゃがみこみ、膝を抱えて涙を堪えた。

泣きはらした目で職員室に戻れない。

しばらく、休んでいれば、きっと、気持ちも落ち着くはず。

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