さよなら、センセイ
個室に通されて2人きり。
「食事の前に、少し話さないか?
まずは俺から話をさせて」
夜景が見えるように、少し照明が落とされているせいか、ヒロの顔はこわばって、暗い。
「いいわ」
恵がうなづくと、ヒロは真っ直ぐに恵を見つめる。
「ごめん。
俺、さよならなんて言って、ごめん。
いきなりだったから、カァーッとなって、取り返しのつかないこと言った。
メグは、俺より仕事を取ったって、俺にとってメグは何より一番なのに、メグにとって俺は一番じゃないなんて…
俺、やっぱ、ガキだよな。
あれから冷静になって考えた。
もし、メグが俺のせいで教師を辞めてしまったら、俺、もっともっと後悔する。
君の夢を俺が壊してしまったって。
もちろん、側にいてほしいけど…
でも、俺、二人で生きていく未来を信じるから。
だから、メグの選択は正しい」
いきなり謝罪の言葉が飛び出した。
予想もしていなかった言葉。
素直なヒロの気持ちに恵も、思いを口にする。
「ヒロ…ありがとう。
側にいれなくて、ごめん。
あなたが社会人になって、あなた自身の力でやれるようになったら。
もしその時に、まだ、あなたが私を必要としてくれるなら、わたし教師を辞めてあなたと…」
そんな恵の言葉に、ヒロは静かに首を横に振った。
「そんなに、待てないし。
メグが遠く離れている間も、他の男に気持ちが向くんじゃないかと不安で耐えられない。
俺は、あなたに溺れてるから。
俺、自分がこんなに嫉妬深くて、独占欲が強いなんて知らなかったよ」