さよなら、センセイ
「ヒロ…」
居ても立っても居られず、恵は立ち上がってヒロに抱きついた。
「愛してる。
ヒロ、私にはあなただけ。
一緒に暮らせる日を信じて待ってる。
その日がくるまで、教師という仕事に精一杯取り組んで来るね。
だから、ヒロも学生時代を目一杯楽しんで」
「丹下恵に、なってくれる?」
「喜んで」
恵の笑顔の返事にヒロは大きく息を吐いた。
ずっと、緊張していた顔が緩む。
「よかったぁ〜もう、ダメかと思った。
俺みたいなガキじゃダメとか言われるかとヒヤヒヤしたよ。
メグ、手、出して」
ヒロは手にしていた指輪を恵の指に入れた。
「わ、ピッタリ」
「さすがはジュン。ジュエリーは専門外だからって友達のデザイナー紹介してくれたんだ。指輪のサイズは以前、洋服と一緒に測ってあったし。
この一週間。色々悩んで、とりあえずジュンに相談して指輪を作ってもらうことにしたんだ。
デッカいダイヤモンドは今は無理だけど、いつか迎えに行く時はキラッキラの指輪を用意するから」
「これも、充分ステキよ。デザインもおしゃれだわ。ありがとう、ヒロ。
後でジュンさんにもお礼言わなきゃ…」
と言った恵の唇は、おもむろに塞がれた。
最初は、ついばむような軽いキス。
2人の目線が重なる。
もう、言葉はいらない。
途端に、貪るような激しいキス、キス。
離れていた互いの想いを再確認して、抱擁は一層強くなった…