さよなら、センセイ
「若月先生。
色々と、ありがとうございました。
先生のおかげで、俺も、多分水泳部の皆も、悔いなく高校生活を終われます。
本当に、感謝しています。

センセイ、ありがとう」

これは、高校生丹下広宗の言葉。
今、ヒロは一生徒として恵に深々と頭を下げた。
ヒロに倣って他の部員達も口々に感謝の言葉と共に頭を下げた。

「そんな…私こそ、皆がいてくれて楽しかった。
たくさん感動ももらった。
本当にありがとう」

こんなこと、ドラマの中だけだと思っていた。
だけど、今、恵は生徒達に囲まれて一緒に感極まって泣いていた。


「若月先生、ずいぶんと生徒に慕われているんですね」

そんな恵に声をかけてきたのは、山中だった。

「丹下君、やっと卒業なのに、若月先生はえらく遠い学校に行かれるんですよ。残念でしたね」

山中は鼻をフンと鳴らし、口元を歪めて笑う。

「山中先生は…あれ?別れを惜しんでくれる生徒の一人も居ませんね」

そんな山中に、ヒロは強気の一言を浴びせる。卒業証書は受け取った。もう怖いものはない。
しかも、ヒロに呼応して周りに集まっていた生徒達も恵を守るように山中をにらみつける。
多勢に無勢。山中はすごすごとその場を去った。


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