さよなら、センセイ
「これから飲みに行くんだろ?山中のヤツメグを狙ってるから気をつけるんだぞ」
恵が機械室隣のシャワー室から出てくると、ヒロは制服についた埃をはたいて、何ごともなかったかの様に身だしなみを整えていた。
「え、まさか、そんなことないよ」
思ってもいなかったらしい反応。そんな鈍感な所も愛しくて、ヒロは恵をぎゅっと抱きしめた。そして胸元のボタンを一つ外し、唇を押し当てた。強く吸い上げてから、ボタンを戻す。
「ヒロ…?」
「山中のヤツがメグの胸を覗き込んだらこれが見えるってワケ」
「ちょっ、なんてコトするの!
これじゃ山中先生云々より、そもそも水着着れないじゃない」
胸元には、鮮やかなキスマークが付いていた。
「…あの水着はダメ。もっと地味でスタイルが強調されないやつデザインしてもらうから。
今日のは刺激が強い。新しいの用意するまで、水着禁止。ジャージにしなさい」
「でもそれじゃあ、水に入って教えられないし…そもそもあれ、競泳用だよ?そんなへんな目で見たりしないでしょ」
「そこは、俺がうまくやるから。
高校生男子の性欲をあなどるなよ」
恵はそうかなぁーと納得していないようだが、こくん、とうなづいた。
それからゆっくりとヒロの背に腕を回してふんわりと抱きしめた。
「大丈夫よ、ヒロ。
私には、あなただけ」
「俺も。
メグ、今どこに住んでるの?携帯は?」
ヒロも恵の体を抱きしめかえす。
「セキュリティがしっかりしたマンションに越したの。携帯は、もう使わないと思って解約した。だって私の携帯、ヒロ以外かけてくれる人いないし」
「わかった。じゃ、今度の休み、一緒に買いに行こ。
あー、このまま連れて帰りてぇ。気を失うほど抱き潰してやりたい。
俺がどれほど心配してたか。思い知らせてやりたいよ。
…淋しかった。メグ、会いたかった」
あぁ、やっぱりヒロは私の最高の男。
欲しい言葉をくれるし、強く抱きしめてくれる。
きっと、上手くやれる。ヒロを失うことを思えば大丈夫、何でもする。
もう、迷わない。