さよなら、センセイ
「よし。
離婚届は、それぞれ持ってるとして。

婚姻届は、今から出しに行こ?
卒業式が結婚記念日。いいよね?」


「大丈夫、ヒロ?気が早すぎない?別に慌てなくても…
うちの両親もビックリしてるし」

恵の両親は、彼女が地元の有名進学校に就職し、家に戻ることを手放しで喜んだ。

ヒロが何度も電話や手紙で懇願したこともあり、実家に戻る代わりの入籍も、渋々ながら認めてくれた。


「メグもまだ仕事残ってるし、俺も、色々手続きとかあるから、早い方がいいんだ。

で、今日は役所が終わったら、ホテルストリークでお祝いの食事しよ」

記入済みの婚姻届を大切そうに畳んでヒロは恵の手を取る。

ーーまるで、イベントを楽しみにしている子供みたい。

そわそわ落ち着かないヒロに恵は微笑んでうなづいた。

「…わかった」


役所の時間外受付に、二人で向かう。



そして、若月恵は、丹下恵になった。

あまりにバタバタとしていて、全く実感が湧いて来ないが。


「やったぁ」


一方のヒロは、役所から出るなり拳を天に突き上げた。


「ホッとしたら、急に腹減ったなぁ。
ご飯、行こ?」


二人はタクシーに乗り込んで、ホテルストリークへと向かう。
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