さよなら、センセイ
ホテル最上階のレストラン。


予約していたので、いつもの個室に通される。

メニューもいつものようにお任せだ。


「はぁ、まだなんか信じられないわ。
私、ついさっきまで仕事してたのに」

「俺だって、昼まで制服着てたよ!」

ヒロは満面の笑みで隣の恵の肩を抱く。

「それがさ、1日でセンセイから奥さん、だもんな。
メグ、やっと俺と家族だね」

嬉しさを隠さず、ヒロが恵に唇を寄せたその時。


コンコンと、ノックの音。


ヒロは小さく舌打ちをして恵から体を少しだけ離した。


「よぉ、丹下。おめでとう」
「ヒロ、恵ちゃん、おめでとう〜」


なんと、姿を現したのは、一条拓人と、ジュンだった。

「先輩!ジュン!
どうして⁉︎」

意外な顔触れにヒロはパッと顔を輝かす。


「ジュンと食事してたらお前を見かけて。
お祝いしてやろうかと」

「あら、拓人ったらカッコつけて。
ヒロのことだから今夜はここで食事すると思って、予約の連絡あったら自分に連絡するように手配してたくせにぃ」

「こら、ジュン、バラすなよ」

二人の掛け合いがおかしくて、恵は思わず吹き出した。

「ありがとうございます、一条さん、ジュンさん。
偶然でも、そうじゃなくてもお会い出来て嬉しいです。
一条さんはこのレストラン、よくいらっしゃるんですか?」


「メグ、ここは、ホテルストリークだよ?」

恵の問いに、ヒロが不思議そうに答える。


「ストリーク。
先生、意味は?」

一条が笑いながら尋ねた。

「筋とか、光線とか…ひとすじの…いち、じょう…
あっ!一条さんもしかして…一条さんの?」

「そ、うちの系列。
だから、お祝いにご馳走するよ。気兼ねなく食べて」

「やっほぉ!
先輩、ありがとうございますっ!
先輩、ジュンも座って!」


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