さよなら、センセイ
「幸せになれるなら、どっちも正解。

拓人、ヒロ、頑張んなさいよ〜」


拓人とヒロは顔を見合わせてうなづき合う。



「さて、そろそろ、二人きりにしてやるか。
ジュン、行こう。二人で飲み直さないか?」

「いいわね!
オヤジを思いながら日本酒といきたい気分よ。
ヒロ、恵ちゃん。お邪魔したわね。

うふふ、ホテルストリークのプレジデンシャルスイートのお部屋で初夜だなんて。
最高にロマンチックね〜」

一条とジュンが席を立つ。

「先輩、ジュン、今日は本当にありがとうございます」

ヒロと恵も立ち上がって深々とお辞儀をした。

「丹下。
恵さん。

悪かった。
一番幸せな夜に、不安にさせてしまったな。

一つ言っておくが、俺は後悔していない。

最高の未来を手にする為に俺たちにとって、離れている今はとても大事な時間だから。

じゃ、四月。慶長大で待ってる。

恵さん、新天地でのご活躍を期待しています」

一条とジュンと握手を交わす。
二人は笑顔でレストランを後にした。





「じゃ、俺たちも先輩のご厚意に甘えて、部屋、行こう。
なんたって、ホテルストリークのプレジデンシャルスイート、まともに泊まれば一泊100万以上するからね」

「…は?
100万円以上?
そ…そんなすごいお部屋をポンと…?」

目を丸くする恵。

「すごいだろ?
さすがの俺も初めて泊まる。
ワクワクするよ!
じゃ、行こうか、奥様」


そう言って、ヒロは恵の手を取る。

その温もりが、嬉しい。
恵は、ヒロの手を握り返す。

離れる時間のことは、不安だ。
でも、先のことより今を大切にしよう。


これからの心配より、二人で一緒に過ごせる今を。







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