さよなら、センセイ


「恵、恵!
広宗くん、テレビに出とる!」

父の声に、遅い夕食をとっていた恵は、慌ててテレビのある居間へと飛んできた。

「今日の『日本経済の新しい風』
今、話題のアリオン・エンタープライズ社社長、丹下広宗さんにお越しいただきました。
丹下さん、よろしくお願いします」

ビシッとスーツで決めたヒロがテレビに映る。

「アリオン・エンタープライズの急成長は、目覚ましいものがありますね」

「ありがとうございます。これもひとえに、自分のやりたかったことを実現してくれたスタッフの皆さんと、バックアップしてくれた家族のおかげです」

「丹下社長のお父様は、アリオン社の会長でいらっしゃいますね」

「自分は本当に恵まれていました。
アリオンという骨格が無ければ、夢のままで終わっていたでしょう。
本当に感謝しています」

「しかも、社長はまだ24歳という若さで」

「新入社員を入れる余裕がなかったので、実は今でも社内で一番下なんです。
まぁ、やりたいと言い出したのは自分ですから、最後まで責任を持ってやろうと引き受けました。
周りはきっと、“アリオンの御曹司だから”なんて事で推したのでしょうけれど。

社長なんてガラじゃないのですが、引き受けたからには死ぬ気で努力していきます」

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