さよなら、センセイ

「ヒロ、先生の連絡先知らない?まだ、北国にいるのかな」

その場にいた全員がヒロを見る。


《私、今日暑気払いだから、遅くなるね。
ヒロも飲み会だっけ?》

今朝、そう言っていた恵を思い出す。


「皆、先生に会いたい…ワケ?」


「そりゃ、会いたいよ!当たり前だろ〜
でも、流石に東京まで来てもらうわけいかないだろ?」

ヒロの問いに即答だった。

「先生、今、東京にいるよ。
栄華女学院で非常勤講師してる」

ヒロの情報に、皆は俄然盛り上がる。

「丹下お前、先生の連絡先知ってるのかよー!
しかも、栄華女学院?こっからすぐじゃん!
先生、来てくれないかな??」

ヒロは腕時計を確認する。

そろそろ、仕事が終わった時間だ。


この飲み会。
言い出したのは綺羅だったが、日時、場所を指定したのは、他でもない、ヒロだ。

色々、サプライズ出来そうでワクワクが止まらない。



「ご予約のお客様でーす」

店内に元気な店員の声が響いた。

ヒロが店内をさりげなく覗くと、そこにお目当ての団体がいた。


「丹下!
先生に連絡してくれよぉ」

「まぁ、落ち着いて。飲めよ」

「飲んでるよ〜なぁ、丹下ぇ」

こちらのほろ酔いメンバーは、その団体に気づかない。



「あっ!あれっ!?」

入ってきた団体がヒロ達のテーブルを通り過ぎようとした。

声を上げて足を止めたのは、恵だった。


「ん…?
もしかして…

めぐみ先生?
めぐみ先生でしょ?!」

気づいたのは、綺羅だ。

水泳部の面々が驚いて彼女を見る。


「うわぁ、皆すっかり立派になったのね!
すごい、偶然」


恵も目を輝かせて、こちらのメンバーを一人ずつ確認している。


「丹下先生、お知り合い?」

そこへ、恵と一緒に入ってきた同僚の女性が声をかけた。

「はい。私の教え子たちです。

懐かしいなぁ。
後で、少し話しましょ?」

恵はヒラヒラと手を振って、自分の団体と共に奥の予約席へと向かった。
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