さよなら、センセイ
「若月先生、大丈夫ですか?リレー」
「大丈夫です。最後の力振り絞ります」

体育教師の中谷が声をかけてくる。恵は大きくうなづいて入場門へと向かった。
各運動部の精鋭達が、集まってきていた。
恵は、水泳部の輪を見つけて歩み寄った。

「どう?調子は?」
「あ、めぐみ先生。大丈夫ですよーウチには、ヒロがアンカーで居ますから」

ゼッケンを付けた綺羅が、笑顔でヒロの肩をたたく。

「若月先生、湿布の匂いしますよ。先生こそ、大丈夫ですか?」
「私はもう、フラフラです。教師チームはオマケだから、楽しんで走るわ。
皆は、頑張ってね。丹下部長、期待してるからね」

ヒロはコクリと頷くだけ。

恵は、教職員の第一走者だ。大きく息をついて位置に着く。
走るのはそんなに得意ではない。でも、ピストルの鳴った瞬間の瞬発力なら自信があった。


「へぇ、若月のヤツ、やるなぁ」
呟いたのは、陸上部のアンカー。
ヒロは、フィールド内で他のアンカー達と出番を待っていた。
恵は、二番手につけている。年齢を考えても大健闘だ。
たかだか体育祭。でも、恵はいつでも全力。そんなところがヒロを惹きつける。
ヒロに気合いが入ってきた。

ーー最後くらい全力で走ってみるか

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