さよなら、センセイ
「あれ、めぐみ先生、寝ちゃってる?」
綺羅が壁に寄りかかったままで寝息をたてる恵に気づいた。
「じゃ、この辺でお開きにするか」
「待ってよ、ヒロ、めぐみ先生どうするの?
今日、大活躍で疲れてるんだよ。
かわいそうだから、少し寝かせてあげたら?」
「疲れてるからこそ、家に帰った方が休めるだろ。
タクシーに乗せるよ。
若月先生、家、どのあたり?」
ヒロがさりげなく恵の口元に耳を寄せる。
「だい、じょぶ。起きる」
微かな恵の声はヒロにしか聞こえていない。
「あー、オレと同じ方向だ。
じゃ、オレが送るわ。
綺羅ん家も通り道だから、一緒に行くだろ?
あとは…」
「オレ達は、良いよ。
丹下、立花と若月先生のこと、頼むよ」
付き合ってないとは、言っていたが、二人が親密なのは、皆知っていたから遠慮していた。
その時。
「あぁ、部長さん。
先生からお金預かっててね。お釣りがあるんだけど…預かってくれないかい?」
顔なじみの店長が、ヒロにスッとお金の入った封筒を渡した。
「え?」
「めぐみ先生ってば、いつの間に!」
「店に来た時にこの封筒にお金入れて渡してくれたんだ。お前らには内緒って言ってたからどうしようかと思ってたけど、寝ちまってるからしょうがない。
いい先生じゃ、ないか」
「若月センセイ〜マジで良いセンセイ。
ありがとう!」
皆は、喜んで帰って行った。