さよなら、センセイ
「秀則さんは、今どうしてるの?」
「4月にこっち帰ってきてさ、今は父さんの会社手伝ってるよ。ほとんど顔合わせない。
ヒデは俺達別れたままだと思ってる。ヒデが帰国した時はメグ、失踪中だったし。母さんにも口どめしてあるから。
ヒデのやつ、俺たちが戻ったなんて知ったら、クリスマスの時みたいにメグのこと利用するかもしれないからさ」
恵の音信不通だった姉が、議員の妻になっていると知った秀則は、クリスマスのパーティで画策して恵と姉を会わせた。
恵にとって姉は恐怖でしかない存在だというのに。
議員との繋がりを得る為なら、弟の彼女も駒として使う。そんな男だった。
ヒロは本当に恵のことを第一に考え、大切にしてくれる。
彼に守られている。その事を幸せに思う。
「ヒロ。ありがとう」
「何しろメグにとって、“最高の人”だからなぁ、俺。
頑張らなきゃなぁ」
「あら、それなら私も。
偶然、私、ヒロが告白されてるところ、見ちゃったの。
私のことだよね?俺の好きな人は最高の女って。…嬉しかった。
すごく…幸せ…」
「メグ、ゆっくりお休み。
明日は振替休日だし、ゆっくり、ね」
恵の隣に体を横たえ、軽く抱き寄せヒロも瞳を閉じる。
互いの温もりを感じながら、深い眠りに落ちていった。