さよなら、センセイ
「手を伸ばして。そう。
丹下くんは力があるからこの手の入りでも速いんだけど、こうしてみて。
そう。
どう?今までより楽に水をかけるでしょ?」

恵はヒロの手を掴み、水の中で動きを教える。

「じゃ、このことを意識してタイムを取りましょう」

ヒロは知っている。恵がメダリスト達の映像を何度も何度も見て研究していることを。
このところは睡眠時間も削っていかに皆に教えるかを考えている。

「OK、丹下くん、その調子。
じゃ悪いけど、私、職員会議があるから抜けるね。後は自主練で。
丹下部長、あと、お願い」

ヒロに後を託し、恵はプールを出る。だが、何人もの部員にアドバイスを求められ、なかなか着替えられなかった。

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