さよなら、センセイ
選手が一斉に飛び込む。

ヒロの体は面白いほど軽く、水をかけば驚くほど前に進む。

そして指先がプールの壁に当たる。
泳ぎ切った。
充実感が身体中にみなぎって、水の中から出るのがもったいないくらいだ。

ヒロは、ゆっくりと水中から頭を出した。
水音だけの世界が、一気に大声援に包まれる。

「1着、光英学院高校、丹下広宗」

「丹下せんぱーい!!スゴイ!!」
「おおーっ!丹下っ!」

ヒロは皆に、笑顔と賞賛で迎えられた。


「おめでとう、丹下くん、最高の泳ぎだったわね」

恵も、満面の笑顔で迎えてくれた。

「若月先生のおかげだよ。

センセイ、ありがとう」

「そーだ、そーだ!
センセーのおかげだ〜」

恵に、感謝の言葉がシャワーのように降り注ぐ。恵は照れて頬を染めながら、笑顔でみんなと喜びを分かち合った。


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