さよなら、センセイ
秀則が部屋から出て行って、ヒロは安堵の息を吐く。
バレたけど、仕方ない。これからは家族の前では堂々と付き合ってやる。
ヒデからは俺が守る。
その時、不意にヒロの携帯が鳴った。
「もしもし?丹下くん?」
恵の声だ。後ろが、何やらざわついている。周りに誰かいるようだ。
「悪いけど、水泳部の皆に連絡してくれるかな。明日、学校で全校集会があるでしょう?そこでね…」
どうやら恵はまだ学校にいるようだ。後ろの声は教職員らしい。聞き覚えのある声も聞こえてくる。
「1年生の中には携帯持っていない子もいるから、確実に連絡をお願いね」
「わかった。先生も遅くまで大変だね〜」
「ふふっ。じゃよろしくね」
恵の電話が切れた。
ヒロは机上のプリントの山から、水泳部員の連絡先一覧を探し出し、電話、メール、メッセージアプリを駆使して恵の伝言を伝えた。
「ヒロ、食事よ」
階下から母の声。ヒロは携帯を放り出し、部屋を後にする。