さよなら、センセイ


恵がコンビニの袋を片手にマンションに帰宅したのは、夜もとっぷりと更けた頃だった。

疲労感で重たい体を引きずりながら部屋の明かりとTVをつけた、その時。

珍しく部屋のインターフォンが鳴った。

「お久しぶりです。若月さん。丹下秀則です。
夜分遅くにすみません。ヒロのことでちょっとお話がありまして…」

思いもかけない訪問者に戸惑う。

ーー何故?どうしてここを知っているの?

しかも、帰宅を狙っていたかのようなタイミング。

ヒロに何かあったのだろうか。
いや、それならまず、一番の理解者であるヒロの母から連絡があるはず。


ヒロに確認してからの方がいいと即座に判断して電話をかけてみるが、ヒロは出ない。

「若月さん、大事なお話ですよ。
ヒロにとっても、貴女にとっても。

開けて下さい。

光英学院高校の若月先生」


知られている!

恵の体から冷や汗が吹き出す。
慌てて携帯をポケットに入れて恵はドアを開けた。


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