さよなら、センセイ
「メグ。
オレ、もう逃げない。正面からヒデと戦ってやる」

やっと平穏をとりもどし、2人並んでベッドに座ると、ヒロが言った。

「…ヒロなら勝てる。応援するから」

「勝てないのは、歳だけ。
それでも、俺だって18歳になった」

「ふふっそうね。
4月がお誕生日だったのに、お祝い出来なくてごめんね」

「失踪中だったからなぁ。
メグに祝って欲しかったよ。
いつでもメグと結婚できる歳になったお祝いを」

「えっ…」


結婚。
ヒロから思いもかけない言葉が飛び出して、恵は思わず絶句する。


「なんでそんなに驚くの?
あれ、メグ、もしかして、俺と結婚なんて考えてもいなかった?
ずっとそばにいるってそういうことでしょ?

俺、ちゃんと勉強する。
それからバリバリ仕事して自分で稼いで、メグにでっかいダイヤの指輪買ってあげるから、指輪は待ってて。

でも、気持ちはいつでもメグ1人だから。

この歳でもう、人生最高の女を手にしてるなんて、
やっぱ俺ってすごいだろ?」


「ヒロ…」


恵はうれしくてうれしくて、ヒロに抱きついた。

「そんな風に思ってもらえて、うれしい。

いつか。

いつか、私をヒロのお嫁さんにしてね」

「…なんつー可愛い顔するんだよ、メグ。
もーダメ。

全部、俺のもんだ」



ヒロの唇が降り注ぐ。
秀則の付けた傷を癒すように優しく。
痛みを忘れさせるほど強く。


この夜、恵は結婚を初めて意識した。


2人で紡ぐ未来。
今までは考えないようにしていた。
だって相手はまだ高校生。
あと10年は未来の話。
それまでにきっと飽きられる。
そう思って“今”だけを大切にしてきたけど。

ヒロとずっと一緒に生きていく。
彼が恵を求めてくれる限り、決して離れないから。そばで支えるから。


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