さよなら、センセイ
夏はそうして過ぎ、季節は秋へと変わろうとしていた。
光英学院高校は、文化祭の時期を迎えていた。

「お疲れ様です、若月先生」
「山中先生こそ、お疲れ様でした」
「いよいよ明日ですね。あ、さすがに今日はまだまだあちこち電気がついてるな」

山中が窓から校舎を見ている。文化祭前日とあって、皆、最後の仕上げをしているようだ。

「じゃ、我々は帰りましょうか」

このところ、恵は山中といつも連れ立って帰っている。電車で恵が先に降りるまでの20分足らずだが。
ヒロは山中には恵への下心がある、と言って良い顔をしないが恵はそんな風には思えない。むしろ、同僚としての信頼を寄せていた。

この日もいつものように恵は山中と電車で別れた。

恵はマンションへと早足で歩く。恵の部屋の明かりを確認すると、小走りになる。


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