さよなら、センセイ
「ただいま」

「お帰り、メグ。お疲れ様」

部屋にカレーの匂いが充満していた。

「うふふ、良い匂い。うれしいな、カレー。ありがとう、ヒロ。忙しいのに」

ヒロはエプロンをしたまま、参考書を読みながら恵を待っていた。

そんなヒロに恵が笑顔でキスをしかけたとき、バックの中の携帯が鳴った。

「若月先生?山中です」

「山中先生?どうしたんですか?」

山中という名にヒロは敏感に反応して耳をよせてきた。

「若月先生に渡し忘れたものがありまして…すぐに後を追いかけたのですが、間に合わなくて。
実は今、先生のマンションの外にいるのですが…」

恵はビックリして、そっとカーテンを開けて外を見る。
マンションの前の植え込みに、山中らしい人影があった。

「すぐに、行きます」

恵は電話を切り、カーテンを戻した。

「あのヤロー…ここまで追いかけてくるなんて。
明日だって学校なんだし、明日でいいじゃんか。何、企んでるんだ?」

「ヒロったら、企むなんて、そんなんじゃないよ。
ちょっと行ってくる」

眉をひそめるヒロの頬に口づけし、恵は部屋を出る。



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