さよなら、センセイ

“結婚を前提に付き合いたい”という言葉が、恵の胸の中でざわめいている。

ヒロの口から、結婚、という言葉が出たのは一回だけ。秀則に襲われたあの夜だけだ。

結婚したくない、と言えばウソになる。
今のこの幸せな瞬間を永遠に自分のものにしたい。

でも、ヒロはまだ高校生。しかも、結婚となれば本人同士だけの問題ではなくなる。
丹下家が、田舎で農家をしている若月家を歓迎してくれるかは、疑問だ。


ーーヒロは、まだ18歳よ。
全てはこれからだわ。もちろん、恋愛も。


きっとこの先、

彼に見合う女性が現れる。

その時、

私は、



捨てられるーー



いつも心の奥にある不安が首をもたげる。


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