さよなら、センセイ
「私のことは大丈夫よ、ヒロ。ビックリしただけ。
さ、ご飯、食べよう。待たせてゴメンね」

恵は湧き上がる不安をおさえつけ、平常心を保って立ち上がろうとした。

だが、そんな恵をヒロはぎゅっと抱きしめた。


「若月恵は、オレのものだ。
絶対に、誰にも、渡さない」


「ヒロ…」


「くそぉ、山中の前で言ってやりたい!
言えないのが、もどかしい。
あー早く卒業してぇ」

背骨がきしみそうなほど強く抱きしめられて、恵は思う。


ーー捨てられたっていい。

この世の全ての女性の中から、ヒロは私を選んでくれた。

たとえ未来で捨てられても、
今、私は、この人に愛されている。

それで、充分。

未来のことなんて誰にも分からないんだから。



恵にとって一番大切なことは、結婚ではなかった。
ヒロに愛されていること。
そして、ヒロを愛していること。
それだけが、大切だった。


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