さよなら、センセイ
「ねーねー、見た?若月先生!すっごいイケメンと歩いてたよっ!」
「見た見た!あの人がカレシかなぁ」
水泳部の一年女子が口々に噂している。
「ちょっと、あんた達、それ、ホント?
めぐみ先生のカレシ?」
噂を小耳に挟んだ綺羅が一年女子を捕まえる。
「すごく親しげにしゃべってましたよ!見たことないようなイケメンと、若月先生」
「まーじーかー!ちょー見たいっ!
ヒロ、ちょっと校内、探しに行かない?」
「なんでだよ、ほっとけ」
興味ない、と口では言い、表情にも出さないけれど、内心気が気ではない。
ーイケメン?誰だ?
ヒロが屋台の前にいるだけで、焼きそばは飛ぶように売れる。主に女子にだが。
それでしばらく屋台にいるようにしていた。
王子様のような笑顔を作り、それでも心には嵐が吹き荒れたままその場にいると…
「あ、いたいた。
久しぶりだな、丹下。
なんだ、お前、客寄せパンダやってるのか?」