さよなら、センセイ
恵と連れ立ってやってきた、スーツ姿の男性。
「一条先輩っ!
いらしてたんですか?」
大好きで憧れの先輩を前に、ぱあっとヒロの顔に笑顔が浮かぶ。
そして、ヒロ以外、綺羅を始めとした三年生は一条を前に直立不動の体勢になる。
気軽になんて話せない。
光英学院高校の先輩ではあるが、今や“世界の一条”の次期総帥、一条拓人。
その凄さは、三年生なら誰もが知っている。
もはや伝説の男。
「ちょっと話でもしようか、丹下」
「はいっ!
みんな、わりぃ、ちょっと抜けるわ」
「お、おう」
一条拓人を中心に恵とヒロは連れ立って、校内を歩く。
一条を知っている三年生はさっと道を開ける。何事かとボンヤリしている下の学年の生徒も、三年生に習って道を開けた。
その様子にビックリするのは恵。
ただ者じゃないことは知っていたけれど、これほど後輩達に畏怖される存在だとは。