さよなら、センセイ

「はぁ、ここは変わらないな。相変わらず臭くて汚い」

「懐かしいですよね?」

「一条さんも、水泳部だったんですか?」

三人が話をしているのは、水泳部の部室。

「学校にある水泳部のトロフィーは、全部先輩が獲ったんだ。
先輩は、生徒会長だったんだけど、大会には出てくれたんだよ。


そうだ、先輩、桜木からは連絡あるんですか?」


「いや…何も」


「俺、この間ジュンの店で聞いちゃったんです。
“いぶきちゃんに作るドレスの色がイメージと違う”とか何とか、ジュンが打ち合わせしてたのを。
桜木、ジュンとは連絡とってるみたいですね」

「そうか」


その時、一条の瞳が切なげにきらめいた。
その翳りは、輝くような一条の容姿には似つかわしくないほど深く、恵は目が離せない。


「あ、桜木いぶきって俺の同級生。
今は親父さんとアメリカに住んでる。
とんでもない秀才でさ、夢は弁護士なんだ。
まぁ、アレだ。一条先輩の…」

そこでヒロは言葉を濁す。
察するに、恋人だった、ということだろう。




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