さよなら、センセイ
「まぁ、俺のことは、いい。
それより、丹下。
驚いたぞ。職員室で若月さんの姿見て」
恵とヒロは一瞬目を合わせて、肩をすくめる。
「私、就職がなかなか決まらなくて。
やっと見つけたのが、ここの産休代替講師だったんです」
「すごい偶然だな。
もちろん、これ、なんだろ?」
一条は人差し指を唇にあてる。
内緒、といいたいようだ。
ヒロは大きくうなづいた。
「まぁ当然、だな」
一条は、ニカっと笑う。
それから、ヒロの瞳を真っ直ぐに見据えた。
「うん、やっぱり、いい眼をしてる。
…決めたんだな」
「…はい。
俺、兄を越えます。
そして、先輩と同じ高みを目指します。
その為にまず、進学は慶長大学の経営を目指すつもりです」
「そうか、大学でも後輩だな。ビシビシ鍛えてやるから、覚悟しろよ」
「望むところです!」
一条もヒロも嬉しそうに語り合う。
「若月さん」
そんな2人を眩しく見ていた恵は、一条を見た。
「私は、彼女を待っています。
弁護士になる夢を叶えて、必ず、私の元に帰ってくると、信じています。
たとえ、どれほどの時間がかかろうとも待ちます。
私の人生のパートナーは彼女しかいない。
私もね、あなたと同じく出会ってしまったんです。
彼女こそが私にとっての、最高の女。
だから、共に生きる未来を信じて待つのです」
恵は大きくうなづいた。
一条の言いたい事が痛いほどわかる。
ヒロが一人前になるまで、信じて待てと言ってくれたのだ。
「同じです。
人生で最高の男に出会ってしまいましたから。
だから、わかります。
たとえ、どれほどの時間がかかろうとも、
待ちます。
でも、一条さん。
待つことは、辛いですか?」
一条の瞳の奥の揺らめき。
それを捉え覗き込むように、恵は真っ直ぐに一条に尋ねた。
いつも、本心は隠しておける。ポーカーフェイスはお手の物。自信があった。
それが、恵には通用しない。仮面の下の本心をズバッと貫いてくる。
一条は手のひらで顔を覆った。そして一度深く目を閉じて大きく息を吸った。
次に目を開けた時には、もう威厳のある端正ないつもの一条の顔に戻っていた。
「…丹下、こりゃ、お前が持っていかれたのがわかるわ。
だが、この純粋さは諸刃の剣だな。
よく今まで無事に生きてこれたなぁ」
それより、丹下。
驚いたぞ。職員室で若月さんの姿見て」
恵とヒロは一瞬目を合わせて、肩をすくめる。
「私、就職がなかなか決まらなくて。
やっと見つけたのが、ここの産休代替講師だったんです」
「すごい偶然だな。
もちろん、これ、なんだろ?」
一条は人差し指を唇にあてる。
内緒、といいたいようだ。
ヒロは大きくうなづいた。
「まぁ当然、だな」
一条は、ニカっと笑う。
それから、ヒロの瞳を真っ直ぐに見据えた。
「うん、やっぱり、いい眼をしてる。
…決めたんだな」
「…はい。
俺、兄を越えます。
そして、先輩と同じ高みを目指します。
その為にまず、進学は慶長大学の経営を目指すつもりです」
「そうか、大学でも後輩だな。ビシビシ鍛えてやるから、覚悟しろよ」
「望むところです!」
一条もヒロも嬉しそうに語り合う。
「若月さん」
そんな2人を眩しく見ていた恵は、一条を見た。
「私は、彼女を待っています。
弁護士になる夢を叶えて、必ず、私の元に帰ってくると、信じています。
たとえ、どれほどの時間がかかろうとも待ちます。
私の人生のパートナーは彼女しかいない。
私もね、あなたと同じく出会ってしまったんです。
彼女こそが私にとっての、最高の女。
だから、共に生きる未来を信じて待つのです」
恵は大きくうなづいた。
一条の言いたい事が痛いほどわかる。
ヒロが一人前になるまで、信じて待てと言ってくれたのだ。
「同じです。
人生で最高の男に出会ってしまいましたから。
だから、わかります。
たとえ、どれほどの時間がかかろうとも、
待ちます。
でも、一条さん。
待つことは、辛いですか?」
一条の瞳の奥の揺らめき。
それを捉え覗き込むように、恵は真っ直ぐに一条に尋ねた。
いつも、本心は隠しておける。ポーカーフェイスはお手の物。自信があった。
それが、恵には通用しない。仮面の下の本心をズバッと貫いてくる。
一条は手のひらで顔を覆った。そして一度深く目を閉じて大きく息を吸った。
次に目を開けた時には、もう威厳のある端正ないつもの一条の顔に戻っていた。
「…丹下、こりゃ、お前が持っていかれたのがわかるわ。
だが、この純粋さは諸刃の剣だな。
よく今まで無事に生きてこれたなぁ」