さよなら、センセイ
「わかっています。
だから、俺は騎士になります。
諸刃の剣を操って、高みを目指していきます。
そして一条先輩が君臨する、玉座を守る騎士になりたい」
「ハハ、上手いこと言いやがって」
一条はヒロの頭をガシガシなでると、
次に、恵と真っ直ぐに向き合った。
「待つことは、辛いよ。
もう二度と会えないんじゃないかと、不安に押しつぶされそうになる。
彼女は自分のことなんて忘れてしまったんじゃないかと、寂しくて苦しくなる。
でもね。
信じることで全てを払拭している。
いぶきは必ず、また、この手に戻ると、信じている。
いや、違うな。
私は、いぶきをまたこの手で掴んでやる。
その為に、最高の高みを目指す。
その時が来ても、誰にも文句なんて言わせないように。
彼女と共に生きる未来を、信じてる。
あぁ、喋りすぎたな。
こんな事、口にしたのは初めてだ」
一条の思いに、恵は胸を打たれた。
そして、多分、いずれ恵も同じ思いを抱くだろう。
ヒロが一人前になるまで、ずっと一緒にいられるとは思えない。離れ離れになる事もあるだろう。そんな時に…
「信じる、こと」
そう呟いた恵の頬に、そっとハンカチが当てられる。
ヒロが無言で恵の頬を伝う涙を拭ってくれていた。
「一条さん、ありがとう。
私も信じます。
何が、あっても」
涙を拭うヒロの腕を掴み、恵は大きくうなづいた。
「大丈夫だよ」
心配そうなヒロにそう告げて、
それから、一条に微笑んでみせる。