さよなら、センセイ
「うん」
珍しく本心を打ち明けた一条は、ちょっと照れながら、それでも、気持ちが伝わったことに嬉しそうにうなづいた。
「さてと、じゃ、若月さん、私はまだ見たいところがあるので、案内してもらえるかな?」
「はい、もちろんです」
「あー、丹下は戻っていいぞ」
「えー俺も一緒に行きます!」
「いらん。いい女と2人きりの邪魔をするな」
「先輩と先生の噂が立ってるんですよ〜俺がいた方が変な噂も払拭できるし」
「あぁ、俺と若月さんが付き合ってるとか?
いいじゃないか、光栄だよ。」
「先輩〜勘弁してください」
「なんだ、顧問の先生にヤキモチか?
生意気丹下らしくないなぁ。
ほら、その整った顔で屋台に貢献してこい、部長」
「うー」
一条の前だと、ヒロもかたなしだ。それがおかしくて恵はクスクス笑ってしまう。
「一条さん、いつか、私もいぶきさんに会いたいわ。貴方ほどの素敵な男性の心を捉えて離さない人…
必ず、会わせて下さいね」
一条は思いもかけなかった恵の言葉にふっと表情を和らげた。
「あぁ、それはいい。
一つ、楽しみが増えたな。
じゃあ、みんなでハワイの別荘でパーティーでもしましょう。
そうだ、ジュンも呼んで、派手にやるか!」
「一条先輩のハワイの別荘⁉︎
すげぇ!確か、小島一つ丸々別荘なんですよね?チョー楽しそう!」
「あれ、丹下も来たいのか?」
「当たり前ですっ!」
「じゃあ、早く俺に認められるようにならなきゃな」
一条は、ポンとヒロの背中を押した。
ヒロは大きくうなづいた。
「じゃ、行きましょうか、若月さん」
部室から出て、一条は恵に微笑みかける。
「はい。
じゃ、丹下くん。
また後で屋台にも顔出すね」
ヒロは恵にうなづいてから、一条にぺこりと頭を下げた。
「じゃ、一条先輩。また」
「おぅ。大学で待ってるぞ」
立ち去るヒロ。
「アイツ、本当にほっとけなくて。一番可愛い後輩なんですよ。
若月センセイ、よろしく頼みます」
「…もちろんです。
私、彼の可能性を信じますから」
一条にきっぱりと告げた恵の顔は、晴れやかだった。
信じる。
その言葉が、恵の心を強くした。