さよなら、センセイ

「なぁ、丹下のやつ、若月先生のこと、好きなのかな」

「でもよー先生も、丹下も、付き合ってる人いるって言ってたじゃん。
オレはむしろ、丹下が山中を嫌ってるだけのような気がするぜ。
山中さぁ、若月のこと、気に入ってるっしょ、だから今もさぁ…」

あとに残った生徒達が口々にウワサする。
山中はそんなウワサ話を耳にしながらヒロの背中を見つめた。

恵を想う者として、山中も感じていた。
恵が倒れた途端、ヒロに走った動揺。それが彼女を想う気持ちからきていることを。
そしてその気持ちは、自分が抱く想いと同類のものであることを。

ーまぁ、いい。生徒が教師を慕うなど、よくあること。
若月先生があんな小僧を相手にするはずもない。
山中はフッと鼻で笑うとその場を後にした。


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