さよなら、センセイ

「うーん。これは、困ったわ」

この場に似つかわしくないほど、間の抜けた恵の声。


「彼、天下のアリオンの社長の息子、です」


「…は…?若月先生?」

山中は思いもかけない恵の言葉に目を丸くしている。


「高校生なら、お金持ちの息子も簡単に落とせるし?
お金目当てで丹下の御曹司を誘惑した、と。
私がそう言えば、満足していただけますか」


バシッと頬を叩く音がした。
山中が恵をひっぱたいたのだ。


「メグっ!」


恵は、立ち上がろうとしたヒロを制す。


「若月先生が…生徒に手を出す…そんな女だったなんて…」


「いかなる理由があろうとも。
暴力を振るう男を選ぶことはないわ、決してね」


山中は耐えられず、飛び出していく。




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