さよなら、センセイ
「メグ、いったい、どうしてあんなこと…」
山中が去り、床に崩れるようにしゃがみ込んだ恵をヒロが抱き寄せた。
恵の体は震えている。まるで感情のない棒読みでつぶやいていた。
「私は、お金目当てで丹下の御曹司を誘惑したの」
「俺をかばうなんて…一人で責任を全てかぶる気かよ」
恵は答えず、ヒロの胸の中でそっと目を閉じた。
この半年余りの思い出が次々とあふれてくる。
「水泳競技会で優勝した時は、感動した。
体育祭では、足の速いヒロの一面も観れたし、ホントに楽しかった。
自分の好きな人と、いつでも近くにいれて嬉しかったよ。
これからどうなるか、わからない。
山中先生の出方次第だけど…
だけど、ヒロ。
万が一の時は、私一人が全ての責任を負うから」
その瞳に強い意志をたぎらせて、恵はキッパリと言った。