さよなら、センセイ
10.咎め
そして、翌日。
学校内の様子がおかしいことに、恵はすぐに気づいた。職員も、生徒も、恵を見てヒソヒソと話をしている。
案の定、すぐに校長室へと呼ばれた。
そこにいたのは、校長、教頭、山中だ。
「若月先生。
今日は何故ここへ呼ばれたか、わかっていますね?」
教頭の言葉に、恵は深く頷く。
「丹下広宗との事は、事実ですか?」
これも、恵は静かに頷いた。
「まさか…若月先生が…
残念です。生徒の信頼も厚く、人気もあり、あの水泳部を立て直した事はまさに賞賛に値するというのに」
校長がこれほど自分を評価してくれているとは思っておらず、ずっと裏切っていたという罪悪感に苛まれる。
「とりあえず、丹下共々謹慎してもらいましょう。卒業まで半年足らずですからね。なるべくここは穏便に…」
教頭が校長に進言する。
「今回のことは、丹下広宗には過失はございません。
一切の責任は、私にあります。
どうか、これで丹下広宗への咎め立て無きよう、お願い致します」
恵は、用意していた辞表を差し出しながら深々と頭を下げた。