さよなら、センセイ

校長の台詞にヒロが返した言葉。

「校長先生のシナリオ通りでしたね。
流石です」


校長とヒロは共謀者の交わすような、したり顔。
ポカンとしているのは、恵だけ。

「…え?え、どう言う事?」


「校長は、俺たちの味方。
今回の騒ぎを収める為に一芝居打ってくれたんだ。

言わなくてゴメンね。
でも、若月先生、嘘つけないでしょ?」


「昨日電話もらった時はビックリしたな。
山中くんのことだ、大騒ぎすると思ったよ。

私の指示どおりに病院には行ったかい?
一条君がうまく手を回してくれただろ?」

昨夜、ヒロはあちこちに電話をかけた。
それから、恵を病院に連れて行き、叩かれた頬の診察を受けていた。
夜間だというのに診察してくれた医師の名は一条。あの一条拓人のいとこだと言っていた。
病院に行くほど酷い腫れではなかったが、後で必要になると言われて…

「はい。診断書も書いてくれました。

教頭には丹下の力をちらつかせれば大人しくなる。
山中には、元々やましい気持ちがあるし、暴力も振るった。だからそこを攻めろって。
校長の読み通りでした」


恵は、開いた口が塞がらない。
まさか、今のやりとりが打ち合わせ済みの想定内だったとは。

『そんな、簡単に諦めるな。
やれる事は、やろう。
俺は“丹下の御曹司”だぞ。こんな時くらいは親の力を借りてもいいと思わないか?』

その言葉通り、丹下、一条、校長まで巻き込み、ヒロは使えるもの全てを使って恵を守ってくれたのだ。




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