ようこそ、不思議の国へ
「アリスちゃん、おはよう」
僕が通っている高校に着くと僕の友達である少年、カイが話しかけてきた。カイの顔が少しニヤついている。
「…だから、僕は女の子じゃない…」
そう。僕は男の子だ。名前や容姿からたまに女の子に間違えられる。
「分かってるよ。それで…妹のビアンカちゃんと飼い猫のシャルルくんは元気?」
カイの問いかけに、僕は「元気だよ」と答えた。
ビアンカは僕の妹ということに、シャルルは僕の飼い猫ということにしている。そうしないと、話がややこしくなるわけで…。そのことをビアンカもシャルルも分かっているのか、僕に合わせてくれている。
「そうか…良かった」
カイは僕に向かって微笑む。僕も微笑み返した。
「ところで…もうすぐある文化祭なんだけど、アリスには女装してもらおうと思っているんだ」
カイは僕を見てニヤりと笑った。僕は、女装することについては慣れている。ファンタジアに行く時は、妖怪のみ少し容姿が変わる。
ビアンカは頭にうさぎの耳が生え、ピンクのワンピースを着た姿に、シャルルは化け猫(茶髪に青目の男の子)になる。そして――。
僕は、水色のワンピース(膝あたりまである)に白いエプロンを付け(腰には白いリボンが巻かれている)、頭には、水色のリボンが付いたカチューシャが付けられている。水色の横シマの入った長い靴下に水色の靴を履いた格好に変わる。
良くファンタジアを行き来している僕にとって、女装することは慣れていた。