ようこそ、不思議の国へ
「…トラスフェリメント」
僕は呪文を唱えた。次の瞬間、ブワッと風が起こり僕とシャルル、そして――ファンタジアから来た魔法使い(僕に魔法を飛ばしてきた張本人)であるマーリンさん(幼い頃、僕を育てながら魔法を教えてくれた人である日突然いなくなった)の足元に魔法陣が現れた。
クラスの皆には、全ての真実を話してある。僕が魔法使いだということ、僕とビアンカとシャルルのこと、ファンタジアのことなどを――。
「――ビアンカを取り返しに行って来ます」
マーリンさん曰く、ビアンカはファンタジアで暮らす魔法使いにさらわれたらしい。
次の瞬間、景色と僕の姿が変わる。シャルルも魔法使いさんも姿を変えていた。
「……申し遅れました。私の名前は、マーリンと言います」
マーリンさんは、ペコりと頭を下げた。シャルルも「……シャルルと言います」と頭を下げる。
「そうか…大きくなったな…」
マーリンさんは、そう言って目を伏せる。マーリンさんは、それ以上何も言わずに前を歩き始めた。
僕はマーリンさんの後を慌てて追いかけた。