ようこそ、不思議の国へ
「アリス…?」
マーリンさんに連れてこられた家に入ると、薄暗い部屋に鎖に繋がれたビアンカが居た。僕は「ビアンカ…今すぐ助ける」とビアンカに近づき、鎖を外そうと手をかける。
バシッ!
僕が鎖に手を触れると、僕の手にヒリヒリとした痛みが走った。
「…いっ。これ、魔法…?」
ヒリヒリとしている僕の手を見つめながら言った。
「……プレカウツィオーネ!」
僕は自分自身に魔法をかけた。僕がかけたこの魔法は、警戒心を向上させ、より早く的確に気配を察することが出来る魔法だ。
コツ…コツ…。
足音がすぐ側から聞こえてくる。僕は何だか懐かしい気配に、違和感を覚えた。
キィ、と音を立てて扉が開かれる。その扉の前にいた2人の人物は、僕たちを驚くことなく見ている。
「ルチェソラーレ!」
女性がそう唱えた瞬間、薄暗いこの部屋が照らされる。僕は思わず目を細めた。次第に光に目が慣れてくる。
僕は改めて部屋を見渡し、2人を睨みつけた。
「…アリス?アリス…だよね?」
女性が驚きながら僕の名前を呼んだ。僕はわけが分からずに戸惑うばかりだ。
「やっぱりあんたらの仕業だったのか…ビアンカをさらってこの家にアリスを連れ戻そうと?」
マーリンさんの言葉にわけが分からず、僕は首を傾げた。シャルルもビアンカも無言のまま。
「ねぇ、どういうこと!?僕に教えてよ!何を隠しているの!?」
「もうお前も高校生だ。仕方ない…真実を見せよう…ヴァールハイト!」
次の瞬間、僕の意識は途切れた。