お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
「お孫さんがいらっしゃるんですね。おいくつなんですか?」
「まだ五歳なの。うふふ、気が早いでしょう。でもね、父親も亡くなっているから、私がちゃんと世話してあげないとね」
(……やっぱり!)
この夫人は、おそらくクリスの祖母だ。
レイモンドの話では、オードリーの嫁ぎ先は子爵家だったはずだ。王都に居を構える子爵家なら、夜会に呼ばれても不思議はない。
「優しいおばあさまがいて幸せですね。お父様がいらっしゃらないのは、寂しいでしょうけれど」
「でもね。もしかしたらあの子に父親ができるかもしれないの。私達も歳だもの。万が一を考えて早く生活を支えてくれる存在ができればと思っていたのよ」
「そうなんですね! それはよかったです」
ロザリーはてっきり、その相手がレイモンドだと思ってそう言った。
(あれ、でも、レイモンドさんは会わせてももらえないって言っていたのに)
「あの人よ。ウィストン伯爵。造幣局にお勤めでね。奥様を亡くしていて、境遇も一緒だからうちの嫁とも話が合うと思うの」
オルコット夫人が指し示したのは、ザックが熱心に話している小太りの男性だ。
「そう、なんですね」
「あなたもこれから旦那様になる方を見つけるのでしょうけど、お仕事をしっかりなさっている方がいいわよ。良かったら誰か紹介しましょうか。でも、あなたくらい可愛かったら、直ぐお相手が見つかるかしら」
楽し気なオルコット夫人の話はもう耳には入ってきていない。
(ど、どうしましょう、レイモンドさん。オードリーさんが、オードリーさんが、ピンチです!!)