お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
「もちろんイートン伯爵家の人間以外は、知りません。俺の恋人とバレると、彼女は危険に巻き込まれることが多くなる。それを防ぐ意味でも、母上のもとで預かっていただきたいんです」
ザックはロザリーの前髪を触り、カイラによって整えられた髪を優しいまなざしで眺めた。
甘い視線に、ロザリーは真っ赤になってしまって思考停止だ。
「ここなら、どんな貴族も手を出せない。加えて俺が通っても不思議がられない。言われてみれば、彼女を王都に居させるために、ここ以上に適したところなんてないんだ」
「だろう?」
ケネスがしたり顔で言う。
どうやら、ロザリーをカイラの傍に置くのを提案したのは、ケネスのようだ。
「わ、分かったわ。預かるのは構わないの。でも毒見なんて……」
カイラはまだ、毒見に関しては不満が残るようだ。
だが、イートン伯爵とザックは顔を見合わせ、イートン伯爵は声を潜めて続けた。
「カイラ様。毒見というか……警戒は必要なのです。内密の話ですが、アイザック殿はすでに毒を盛られそうになったことがあります。おそらく……第一王妃の側近周りが犯人だと踏んでいますが、証拠までは掴んでいません」
「なんですって?」
「大丈夫です。母上。幸い、先にケネスが気付いてくれました」
カイラはホッと胸をなでおろしたが、犯人が捕まっていないことを思い出し、顔を上げる。