お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
しばらくはそのまま歓談していたが、やがて思い出したようにザックが口を開いた。
「そういえば、レイモンドはどうしてる?」
「うちで働いてもらってるよ? オードリーには会えてないみたいだけどね。どうしたんだ? 急に」
「……詳細は省くが、先日造幣局に視察に行ったんだ。そこで聞いた話なんだが、造幣局局長のウィストン伯爵とオードリーの間には縁談があるらしいんだ」
「ああそれなら俺も聞いているよ。どうも子爵家のご両親が積極的に進めている話のようだけどね」
ロザリーは耳をそばだててふたりの話を聞く。レイモンドの幸せに関わる話だ。なんとかしてふたりを会わせてあげたい。
「なんだ知っているのか。……で、成り行きで子爵家の話になって。鉱物関係の調査のためにオルコット子爵家に行く約束を取り付けた。もしよければその時にレイモンドを連れて行ければと思ったんだが」
「ええっ。すごいです、ザック様」
そんな伝手を持ってるなんて!とロザリーは色めき立ったが、難色を示したのはケネスだ。
「いや、レイモンドはすでにオルコット家の門番に顔が知れているだろう。君との関係性がバレるのはあまりよくないな。俺が行こうか。君の補佐官として」