お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
「……補佐官に戻ってくれるのか?」

ぱっとザックの顔が晴れ渡る。ケネスの顔もうれしさでほころんでいるのをロザリーは見逃さなかった。

「懸念事項だったロザリー嬢のことはひと段落ついたからね。君さえ異存がなければ戻してくれると助かるかな」

「もちろんだ。お前がいないと何かと不便で」

「あと、オルコット邸に行くときは、ディラン先生とロザリーにも同行してもらおう。ロザリー嬢はディラン先生の助手として」

「ディラン先生? 毒物研究のだろ? 伝手があるのか?」

「先日までロザリーに毒物講義を行ってもらっていたところだよ。鉱物については彼も興味があるだろうし、頼めば同行ぐらいしてくれるだろう」

「ディラン先生にいてもらえるならこっちもありがたいな。ではそれで日程調整しよう。また連絡する」

「なんだかよく分からないですけど、一歩進める感じですね!」

「そうだね。レイモンドのために、ロザリー嬢にも頑張ってもらうよ」

「もちろんです!」

満面の笑みを浮かべたロザリーをザックはニコニコと眺めながらぼそりとつぶやいた。

「顔見てるだけで、元気が出るもんだな」

「だから君にはロザリー嬢が必要なんだよ。自覚した?」

ケネスにニヤニヤ笑われて、ザックは不貞腐れた顔で頷くしかなかった。

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