お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。


その日から、ロザリーは離宮に部屋をもらって住むことになった。

「お部屋はここを使ってちょうだいね。服はとりあえず私のを貸すわ。明日、イートン伯爵の使いが持ってきてくれるとは言っていたけれど」

ロザリーとふたりきりになると、カイラは水を得た魚のように生き生きとし始めた。
それが不思議でじっと見ていると、カイラは視線に気づいて苦笑する。

「ご、ごめんなさいね。世話を焼いてしまって」

「いいえ。嬉しいです。でもカイラ様のイメージが先ほどと違って意外で」

「……イートン伯爵がいらっしゃったからかしらね。私がもともと侍女だったのはご存知?」

「はい」

彼女は椅子にロザリーを座らせ、櫛を手に髪を梳かし始めた。

「人のお世話をするのが好きだったの。美しい令嬢をさらに綺麗に飾ったり、部屋の中で心穏やかに過ごせるよう、家具や花を選んだり。侍女は天職だったと思うわ。そうしているうちに国王様の目に留まり、国王様の身支度を整える係になったの。……そのころにはもう愛人ね。私に、断る権利はなかったもの」

「……無理やりだったのですか?」

「いえ? 国王様のことは愛しているわ。早くに両親を亡くし、国王という思い重役を背負わされた彼は、きっと弱音を吐き出す相手が欲しかったのよ。私はそんな彼を、守りたいと思った。けれど第一夫人であるマデリン様は私のことが目障りだった。嫌がらせもたくさんされたわ。見かねて、国王様は私を側室にと取り立ててくださったんだけど、今度は貴族の皆様から威圧を受けるようになったの。まあ、使用人が王妃になれば嫌味のひとつも言いたくなるわよね」

「そんな……」
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