お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
「念のため、鍵はかけておきますね」
侍女には疲労の色が見られる。
深夜にこんなことが度々起こるのであれば、ゆっくり熟睡などできないのだろう。
「ずっとこんな感じなんですか?」
「毎日ではありませんが、時折起こりますね。今みたいに、アイザック様や国王様の名前を呼び続けていることが多いです。……お寂しいのでしょうね。国王様とも、とても仲睦まじかったんですが、気弱なカイラ様は貴族と渡り合っていくのには向いていないのでしょう」
「……そうなんですね」
ロザリーは再び自室のベッドに入り、丸くなって目をつぶった。
季節を問わず、心休ませるような庭園。
昔はよく髪を結っていたと、笑ったカイラ様。
母親に語り掛けるザックは、よそよそしい敬語を使っていた。
「眠れない……」
なにかがすっきりしない。
みんなカイラ様を心配している。カイラ様もみんなを愛してる。
なのにどうしてうまくいかないのか。
もぞもぞとベッドを転がっていると、やがて体が温まってくる。
単純にもすぐにあくびが出てきて、ロザリーは体を仰向けにした。
「ザック様……おやすみなさい」
今日の笑顔を思い出して、ロザリーはホッとして眠りに落ちた。