お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
最後のは嫌味だ。ザックとしては、父親に対しては不信感が強い。
ふたりの王妃がいがみ合うのも、重臣たちが勝手に動き出すのも、すべては国王である父に覇気が足りないからだと思っている。
会話はななんとなくそのまま途切れ、ザックとケネスは三日後の約束をして帰って行った。
常であればその後入浴の時間になるのだが、この日のカイラはテラスから望める庭の方へとふらふらと向かっていったので、ロザリーはついていくことにした。
「カイラ様、何かはおらないと寒いです」
ガウンをもって追いかけると、カイラは力なく微笑んだ。
「ありがとう」
「風邪を引いたら心配されます」
「誰に? 私を必要としてくれる人なんてもういないわ。アイザックだって、陛下だって」
「そんなこと……」
ないです。とロザリーは思う。同情とか慰めじゃなくて本気でだ。
少なくともここ最近のザックは、ずいぶんとリラックスしている。母親と過ごす時間を楽しんでいるように、ロザリーには見えるのだ。
だけど、それは、カイラが信じてくれなければ、嘘にしかならないのだ。
彼女が目で見て実感しなければ、黒だって白になる。他の誰が違うと言ったって意味なんかない。
だとしたら伝えられるのは自分の気持ちだけだ。