お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。

「私は心配です。カイラ様」

「ロザリンドさん」

「私、カイラ様が好きです。母を亡くしているので、こうして女同士の話ができるの、楽しくて仕方ありません。それに、他の人では教えてくれないことをいっぱい教えてくれるじゃないですか」

「でも、……すぐにひとりでできるようになっちゃうでしょう? アイザックだって、そうだったわ」

「できるようになっても、一緒が楽しかった時は無くなりませんよ、カイラ様。私、この離宮での日々をきっと一生覚えてます。カイラ様とだから、楽しかったんですもん」

カイラはきょとんとして、ロザリーをじっと見つめた後、彼女の頬をふにふにと触ったり伸ばしたりした。

「ふわっ、なにするんふえすか」

「……ふふっ」

つぎの瞬間、ロザリーはカイラに抱きしめられる。

「アイザックがあなたを選んだの、何となくわかるわ」

「え? え? なんでですか?」

実はロザリーは分からないのだ。どうしてあんな眉目秀麗の王子様に気に入ってもらえたのか。

「私達はきっと、……本当は愛を信じたいんだわ。自分の損得で付き合い方を変えるような、常に善意と便宜を秤にかけるようなそんな人ばかりじゃないって。……あなたはそう、信じさせてくれる人だからよ」

「え、えっと」

単純なロザリーには、彼女の言ってることは理解できない。
気持ちに正直に生きれば、誰だって自分のようになるはずだと信じて疑っていない。
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